『虐待は連鎖する』というのは聞いたことがあるが、研究ではどうなってるのか。
親に殴られて育つと、自分も殴る親になる、みたいな世代間連鎖のやつ。
84の研究を統合解析したメタアナリシスを一つ見るところでは、
親自身の被虐待歴と子どもへの虐待・ネグレクトとの関連については、r = 0.289(相関係数) という中程度の効果量。
odds ratio (OR) = 2.990 なので、虐待経験のある親の家庭では、そうでない家庭と比べて約3倍の確率で子どもへの虐待が生じると(Assink et al. (2018), Child Abuse & Neglect)。
doi: 10.1016/j.chiabu.2018.07.037.
リスクとしては考慮すべき因子(被虐の歴史)だが、それによって「必ず虐待を再生産する」わけではない。
虐待は多因子的な現象であり、他のリスク・保護因子と合わせて包括的に評価することが不可欠、という結論。
そりゃそうか。虐待って言っても身体的、精神的、色々あるし、同じ刺激(被害)を受けても、個体が変われば(虐待の)やり方もレスポンス(受け取り方、反応、対抗)も変わるだろうし、研究として難しそうだな。
では、これはどうか。
『職場でめっちゃシバかれると下の者をめっちゃシバくようになる』系のやつ。
研究あるんだなぁ。
| 理論 | 概要 |
| Trickle-down effect(滝落ち効果) (Mawritz et al., 2012) | 階層を伝わって連鎖(自分もずっと詰められてきたから、詰めることがマネジメントだと思っている) |
| 社会的学習理論(Bandura) (Bandura, 1977, Social Learning Theory) | 観察・内面化による行動の再現(直接教わらなくても、上位者の行動を観察・内面化し「これが正しい管理職の姿だ」と無意識に学習する) |
| Displaced aggression(置き換えられた攻撃) (Hoobler & Brass, 2006) | 弱い相手への怒りの転嫁(上司には言い返せないので、より安全な相手(部下や家族)に怒りや屈辱を転嫁) |
| 資源保存理論(COR Theory) (Hobfoll, 1989 / Lam et al., 2017 / Kim et al., 2020) | 消耗による 余裕の喪失(ブラックな環境で消耗し続け、自制心・共感・公正に振る舞う余力がなくなり攻撃的・支配的になりやすくなる) |
昔、ブラックラボでしばかれていた時、めちゃくちゃ温厚で優秀な同僚が
『ラボでしばかれて、家に帰って家族にいつもどおりに優しくできずにイライラすることが起こった。その時に、とにかくこのラボでなんとかサバイブすることだけを考えるようになった。業績とかじゃなくて。』
と言っていた。
なかなか重い言葉だな、と思ったし、適切に対処して大事な家族を守っていて素敵だった。
というようなことを思い出して調べてみた。
