怖かった「ツケ」る歯医者の話

これはもう5年くらい前の話。

かかりつけ歯科医を見つけることは引っ越し後の大事な儀式の一つである。
結構大変だけど仕方がない。

歯が痛い。

私はGoogleの口コミを丹念に見まわし『その歯科医』を見つけた。

行って衝撃を受ける。

そこは歯科医の先生が『受付から何から全て一人で回す』ところだったことだ。

ここは23区。探せばスタッフはいくらでもみつかりそうだが?
都会だから人件費が高いのか?
やや田舎町ではこういうの見たことあるけど…。
一抹の不安がよぎる。

待合室には自分以外にも治療を待つ患者さんがいた。
大丈夫だろう。口コミのコメントも3ヶ月以内についていた。
自分に言い聞かせる。

心配をよそに、先生はサクサクと一般的な初診を済ませた。
よかった、と安堵する。

助手さんがいないのに、器具はどうするのか、清潔に洗われたものがでてくるのだろうか、というところも不安だったが、幸い、一人の患者さんを見るのに必要な「器具一式」が個包装で用意されていた。

大丈夫そうだ、先生が問題なく一人で見れるようなシステムが十分に整っている。

私は、その歯医者さんをかかりつけ医として、しばらく通うことにした。

怖いのは「そういうとこ」じゃなかった。


治療はそれなりに恙なく進む。

ある日、いつものように私は待合室で診察を待っていた。

治療を終えた患者さんが、診察台から待合室に移り、お会計の場所に立つ。

ここは一人de切り盛り歯医者なので、お会計をするのは先生だ。

先生は

『今日はお会計いいです』

と言った。

どうやら『ツケ』と言うことらしい。

ここは飲み屋か?と思った。

ふと考える。

治療によってはお会計が500円くらいの時もあったりする。
ここは先生が「一人で回す」とこであり、ぶっちゃけ、額が小さい時の会計なんて面倒なだけだろう。
合理性を優先して、後でいっぺんに払うシステムなんかな、と理解した。

合法かは知らん。

その後もいろんな人に『ツケ』にするのを見たし、私もついに『ツケ』になる日があった。
私がツケた日は明らかに少額請求になるような治療をされた時だった。
やはり『ツケ』は業務の効率化なのだ、私の勘は当たったな、と納得した。


通院し続けるとだんだんとその歯医者の「カラー」がわかってくる。

その日も先生は、診察後の患者さんの会計のために、受付に立つ。
お会計をしながらの談笑、そして先生は会計相手(女性)に対し『今度また飲みに行きましょう』と言った。

私は(今度また飲みに行きましょう?!?!?!?だと?!?!?!)と思った。


なるほど、ここはお客さんとの距離が「近い」カラーなのか。
下町だしな、楽しそうだな、と呑気に思った。

距離感がおかしい人には注意が必要なこと、今ならわかる。


また別の日。

ついに私は戦慄することになる。

その日は、私は診察台で先生が「前の人」の会計を済ませるのを待っていた。
何せここは一人で切り盛り歯医者。
今日のように先に、次のお客さん(私)を治療台に案内し、私の前の患者さんのお会計を行うこともある。

先生は言った。

「今度、どうですか?飲みに行きませんか?」

歯医者に行って「飲み」という単語を聞く回数、圧倒的に日本一。

誘われた女性は「いえ、あの、うーん…」と言う感じで、歯切れ悪く返事をする。

先生は「お会計も今度でいいですよ」と言った。

女性は「あはは…」と作り笑いをして曖昧な間をつくっていた。

が、やがて
「いえ、そういうのは…その…今日は払います」と言った。
キッパリと飲みのお誘いも断わる雰囲気が行間から伝わってきた。

すると先生は、急に、先ほどとは違う冷たい感じで

「5千円です」

と言い放った。

この歯科医院の仕組み分かり、震え上がる。

そう、ここは、

女をナンパするための「ツケシステム」「一人切り盛り歯医者」だったんだ!!

なるほどね〜。


3割負担で5千円(実費だと1マン7千円くらい?)分の治療がどんなもんかって、なんとなく、なんとなーく想像つくけどな…果たして…。

歯医者通院歴が長いとはいえ、所詮わたしはしがない患者の一人。細かいことはわからんね。

ということで、一人で切りもり歯科医にはご注意を。
(真面目に一人でやってる歯医者さんを誹謗中傷する意図はありません)

歯は大事にしような…。

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です